論理学FAQのブログ

授業でもらったコメントに対して書いたリプライを、ブログ形式に編集しました。

イアン・ハッキング (1936-2023)

イアン・ハッキングが亡くなりました。トロント大学からの発表をリンクします。 philosophy.utoronto.ca 実際に会うことも喋ることもなかったですが、翻訳で関わったことで、何か一方的な親しみを感じていた哲学者です。とても残念です。 1936年、カナダ・…

『フィルカル』で特集していただきました

雑誌『フィルカル」Vol.7 No.1 誌上で、拙著『3STEPシリーズ論理学』の特集を組んでいただきました。 philcul.net 私の「自著解説」に加えて、澤田和範・細川雄一郎・植原亮・槇野沙央理の豪華4氏による、的確かつ刺激的な書評が掲載されています。4氏にはこ…

『論理学(3STEPシリーズ)』昭和堂

このたび本を出させてもらうことになりました。オフィシャルには12月10日発売のようですが11月末くらいから出回るのではないかと思います。 www.showado-kyoto.jp 昭和堂の「3STEPシリーズ」の1冊です。見本がすでに手元にありますが表紙の蛍光色がものすご…

森田真生『計算する生命』

www.shinchosha.co.jp 本書所収の論考が『新潮』に連載されているのを読んだとき、わりと興奮したのを覚えています。つねづね自分がおもしろいと思っているポイントをみごとに捉えていたからです。それらの論考がこうしてまとまって出版されたことをうれしく…

帰ってきたオンライン講義YouTube配信実録

ごぶさたしておりますが、夏に続いて、大学でYouTubeライブでの公開講義配信をやりました。気づいたことを少しだけ書いておこうと思います。 以下が一連の講義の再生リストです。おもしろい講義満載なので見てください。 youtube.com ここでは主にテクニカル…

授業動画公開:直観主義論理(3)(4)

直観主義論理シリーズ第3,4回です。予想通り、6本で終わりそうです。今回の2本はテクニカルな説明がメインでわりと無味乾燥でしょうか。 前期からやってきて、帰納法による証明をようやく導入しましたが、ちょっと遅い気もしますね。でも、前期の内容(古典論…

授業動画公開:直観主義論理(1)(2)

引き続きの授業動画です。今回から直観主義論理です。ほんとは証明論でやりたいんですが、モデル論でやります。分量的には6本くらいになるでしょうかね。 レジュメ 直観主義論理 動画 youtu.be youtu.be

授業動画公開:厳密含意の論理

2020年度の後期授業が始まりました。コロナをめぐる状況も徐々に変わっていますが、前期と同じように授業動画を作って、共有させてもらおうと思います。 後期は厳密含意から始まります。 レジュメ 「正しい論理」を求めて:厳密含意の論理 動画 youtu.be you…

オンライン講義YouTube配信実録(11)―おまけ:機材・設定編

ありがたいことに、オンライン講義配信の技術的なことについて、学内で問い合わせをいただく機会が多くなってきました。そこで、機材や設定について少し細かくまとめておくことにします。すでに takuro-logic.hatenablog.com takuro-logic.hatenablog.com ta…

オンライン講義YouTube配信実録(10)―完結編

とくに新しい情報もないですが、シリーズ完結編です。合計26回のライブ配信、主に音ズレなど細かいことはあったものの、致命的なトラブルはなく終えることができました。開始3分前までネットが繋がらないとかいうヒヤリハット事案もあったんですが(わはは)、…

オンライン講義YouTube配信実録(9)― Atem miniとV-02HD

ひさしぶりの更新です。音ズレについては、前回書いた takuro-logic.hatenablog.com 教えてもらった方法でやっています。それでも起こるときは起こりますね。起こったのは、「スライド+PinPでカメラ」からカメラ映像のみに切り替えたときです。しばらくする…

0項述語

とつぜん論理学ネタに復帰しますが。動画で言えばこのあたりです。 youtu.be 述語の項数 述語論理の原子式は項と述語からなるわけですが、述語には1項述語、2項述語、3項述語…と項数 (arity) が決められています。 日本語と対応させるなら「…は人間である」…

オンライン講義YouTube配信実録(8)―新・音ズレ編+スイッチャーこぼれ話

スイッチャーを変えても音ズレ出ちゃったね…ということで takuro-logic.hatenablog.com 途方に暮れていたのですが、ちょっと気になっていたこともありました。 気になっていたこと 今回の配信の特徴は、 カメラとスライドの映像を切り替えたりPinPで合成した…

オンライン講義YouTube配信実録(7)ーZoomからYouTube編

この仕事は次々やってくるいろんな設定、いろんな環境で録画や編集、配信をしないといけないのでハードです。ソリューションを考えるのは好きなのでいいんですが。 ZoomからYouTubeへの配信 いつもは京都からカメラ映像をそのままYouTubeへ配信するわけです…

オンライン講義YouTube配信実録(6)ーslido編

今回はちょっとポジティブな話です。 配信中にアンケート投票 先生から「配信中にアンケート投票やりたいんですけど、できますか」というお問い合わせをいただきました。私がパッと思いついたのは、ニコ動の将棋中継でやってる「次の一手アンケート」でした…

オンライン講義YouTube配信実録(5)ー音ズレ再発編+Atem Mini Proのこまかい話

takuro-logic.hatenablog.com の続きです。 配信中の音ズレがハードウェアの問題かなと思って、ミキサー周りをV-02HDからAtem Mini Proに変えてみたのですが、結局再発しました。 配信中にOBSで遅延時間を変更できることがわかったので(一瞬だけ音声は途切れ…

オンライン講義YouTube配信実録(4)ー続・音ズレ編

前回の takuro-logic.hatenablog.com のアップデートです。とくに有益な情報はないかもしれません笑 上記エントリを書いているうちになんとなく、ソフトウェアではなくハードウェアの問題かなと思うようになってきたので、ミキサー周辺を取っ替えることにし…

授業動画公開:古典述語論理(5)(6)

前期はこれで終わりです。かなりぎゅぎゅっと凝縮して話しているのでどうでしょうか。 youtu.be youtu.be 述語論理の再生リストも貼っときましょう。 www.youtube.com 前期はこの論理学ともう一つの非常勤授業で合わせて40本ほど動画を作ったようです。授業…

オンライン講義YouTube配信実録(3)ー音ズレ編

配信の手順には慣れてきましたが、わりと大きな問題が出てきました。音ズレです。解決策は見えません。とりあえず問題を共有します。 問題 カメラからミキサーを通じて入力した映像と音声を、OBSを通じてYouTubeに配信しているのですが、音がズレます。基本…

授業動画公開:古典述語論理(3)(4)

前回 takuro-logic.hatenablog.com に引き続き、古典述語論理です。述語論理はとにかく細かいところがめんどくさくて、自分で勉強するのはともかく(いや、細かい話、好きなんですよわたしは)、教えるのはほんとうにつらいものがあります。 で、動画では、め…

オンライン講義YouTube配信実録(2)

前回のこれ takuro-logic.hatenablog.com の続きです。大失敗したら書かなかったと思いますが、ひとまず大過なくスタートしたので書きます。機材だけでなくオペの問題などについても触れたいと思います。配信担当の人間のアタマの中のぐちゃぐちゃ具合をその…

授業動画公開:古典述語論理(1)(2)

ひーひー言いながら動画を作っています。そして述語論理はいつまでたっても満足いく説明ができません。こちらもご批判たまわれば。 レジュメはこちらです。 すべてを表現する言語が存在する:古典述語論理 動画はレジュメと合わせてご覧ください。 youtu.be …

オンライン講義YouTube配信実録 (1)

論理学と関係ないですが、情報としては価値があると思いますので共有します。 いま、わたしの本務先で、YouTubeで配信するオンライン講義シリーズを提供しています。わたしは講義をする立場ではなく、カメラやPCを操作して配信を行う役割です。そこで、配信…

授業動画公開:様相命題論理

ご存知のように今期の大学はオンライン授業で何とかしのいでいるわけですが、わたしも例にもれずたくさんの動画を作っています。だいぶたまってきたので、論理学の授業の動画(の一部)を公開することにしました。 レジュメ まず、こちらからレジュメを見てい…

論理が開く世界―京都新聞夕刊「人文知のフロンティア」寄稿

2020年3月25日京都新聞夕刊に寄稿させていただきました。「人文知のフロンティア」というシリーズの1回なので「論理学は人文学だ」というオチにしていますが、ともあれ中身を楽しんでいただければ幸いです。「論理が開く世界」は新聞社の方に付けていただい…

論理学集中講義をYouTubeライブ配信したので、メモ

京都大学のCAPE主催の公開セミナー「論理学上級」をYouTubeでライブ配信しました。今後、役に立つかもしれないので情報共有します。 経緯 「論理学上級」は毎年この時期に行っている論理学の集中講義です。わたしは一昨年から担当させてもらっています(一昨…

論理的実在論、にたどりつけなかった話

前エントリで少し示唆した「論理学の哲学」についての話です。 takuro-logic.hatenablog.com 学生さんに「論理的実在論」(論理の実在論だったか、論理にかんする実在論だったか、言葉はあれですが) について教えてください、と言われていたので、少し勉強し…

君ら、ほんまに興味あるんか?

以前、科学基礎論学会でイアン・ハッキングの数学の哲学について発表をしました(スライドはこちら)。ちょうど来日滞在中だったLeon Horsten先生と (それにわれらが伊藤遼さんと) 一緒にパネルをさせてもらったのが、とてもよい思い出です。 発表の内容は「な…

C.I.ルイスの厳密含意 (3)

ずいぶん間が空きましたが、しれっと再開します。続くかどうかは微妙。ともあれ、厳密含意の話が途中で終わっていたので、それをしめくくりたいと思います。 ここまで2つの記事で、C.I.ルイスの厳密含意がどのような問題意識とどのような着想のもとで生み出…

C.I.ルイスの厳密含意 (2)

続きです。前回はこちら。 takuro-logic.hatenablog.com かんたんに復習すると、「実質含意のパラドクスを解決するため、C.I.ルイスは必然的な含意としての厳密含意を導入した」という教科書的なお話に対して、ではなんでルイスは様相 (必然性) を導入すると…