2019年5月7日のコメントペーパーより。レジュメは古典命題論理。
コメント:この授業のモデル論は集合論の考えを使ってモデルを構成していますが、集合論以外にも論理の基礎づけに使われているような体系があったりするのでしょうか。
回答:集合論は、数学一般において用いることのできる存在者の領域 (基礎的な存在者とその組み合わせ法) を提供する基礎理論*1で、この授業のモデル論もその意味で集合論を使っています。とくに論理だからというわけではありません。
で、集合論以外に同様の役割を果たしうる基礎理論があるかということで言えば、あります。おっとその前に、集合論といってもいろいろあるということも言っておかないといけないですね。現代では、集合論は、いまわたしたちがやっている論理に、集合の存在や性質について述べるいくつかの公理を付け加えたものとして定式化されます。公理的集合論というやつです。
公理的集合論=集合にかんする公理+論理
です。そこで、公理のうちのいくつかを取り除いたり加えたり取り替えたりすれば別の集合論ができますし、また、たとえ公理はそのままでも、ベースになる論理を古典論理ではなく別の論理、たとえば直観主義論理などに変えればまた別の集合論ができあがります。
そうした集合論のバリエーションをいちいち説明するとしんどいので、検索してみますと、矢田部先生のぴったりのノートが見つかりました。いろいろな集合論についてまとめて説明してくれている資料は少ないと思います。これは偉業です。興味のある方はぜひ。
次に、集合論以外の基礎理論としては、圏論 (category theory) や型理論 (type theory) が挙げられるでしょう。どちらも、計算機科学とのつながりが集合論より密接な印象です。圏論については
型理論については
あたりを眺めてみてはいかがでしょうか。数学の基礎理論という見方とは直接にはつながらないかもしれませんが、まあおもしろければそれでいいじゃないですか。