京都大学 のCAPE 主催の公開セミ ナー「論理学上級」をYouTube でライブ配信 しました。今後、役に立つかもしれないので情報共有します。
経緯
「論理学上級」は毎年この時期に行っている論理学の集中講義です。わたしは一昨年から担当させてもらっています(一昨年 、昨年 、今年 )。大学の(文系の)授業ではやらないようなアドバンストなトピックを、ある意味では講師の趣味丸出しで、思い切ってやってみようという試みです。京大の正規の授業ではありません。
今年は3月14,15日に矢田部俊介先生、21,22日にわたしという担当で予定していました。どちらも1日3コマ(5時間)程度×2日というかなり長時間の講義です。
例年はもちろん京大の教室で講義していたのですが、今年の新型肺炎 の影響により、まず教室での講義と並行してウェブ配信を行うことに決めました 。基本的に少人数の講義なので、教室で行っても感染リスクは低いだろうということと、それでも、出席したいが自粛するという方もいらっしゃるだろうということ、両面を考えてのことでした。
それが急転直下、3月12日に京大文学研究科から「3月16日からの教室使用を当面禁止する」旨の通達が出されます。14,15日は形式上は使用可能ですが、通達の趣旨を踏まえて、私たちも教室使用を諦めることにし、ウェブ配信一本で行うこと にしました。配信はYouTube で行うことにしました。
配信にかかわるテクニカルな事柄(機材、ソフトなど)はすべてわたしが担当しました。ふだん動画作成などもやっているので、こういったことについては詳しいほうだと思いますが、配信に関してはまったくの初めてでした。
考慮項目
まず考えたのは配信はYouTube にするかZoomにするか 、です(ちょうどZoomが脚光を浴び始めた時期でした)。以下の理由からYouTube に決めました。
YouTube のライブ配信 については自分でしたことはなかったものの、ときどき見る機会はあり、どういうものかについての相場観はあった。
YouTube はリンクをクリックするだけで誰でも見られる。Zoomも簡単とはいえひと手間かかる 。
論理学の講義なので(スライドではなく)板書が必須。そして、板書をきれいに配信するためには、ある程度の画質が必要。これもYouTube については相場観があったが、Zoomはよくわからなかった。
YouTube は自動的にそのままの画質でアーカイブ が作成される。Zoomも録画は作成できるが、やはり画質が心配だった。
と並べてみると、要するにYouTube のほうが馴染みがあった 、ということに尽きますね。Zoomについてはこちら側でも聞き手側でもこれから馴染みが出てくるのだと思います。
一方、YouTube で心配なのは相互性でした。受講者からの質問はチャット欄で文字だけになってしまうし、講師からし てもリアルタイムの「顔」の反応が見えないのは不安です。ということで、YouTube での配信と並行してZoomミーティングも 開いておくことにしました。
実施
講義の様子は以下のアーカイブ から見られます。
3/14: https://youtu.be/KrX0Efnulgg
3/15: https://youtu.be/Pf1YU4JEkkw
3/21: https://youtu.be/CGjikv5m6Ys
3/22: https://youtu.be/bRE0L08kh6I
14,15日はわたしが所属する「人社未来形発信ユニット」のセミ ナールーム、21,22日はわたしの研究室で行いました。どちらも壁一面がホワイトボードです。尋常でなく長いという点を除けば、画質・音質ともに十分だと思います(少しカクつく時間帯はありました)。
機材セッティング は次のような感じです(汚いですが)。
カメラ :Panasonic Lumix G8 (レンズキット付属のデフォルトレンズ)
PC :MacBook Pro 16inch (現行上位機種カスタマイズなし) これはめちゃくちゃ高いやつですが、少し非力な2015モデルMacBook 12inchでも問題はなさそうでした(長時間の安定性については未テスト)。
キャプチャーボード :Pengo HDMI Grabber 1080p (カメラから出力したHDMI をMBPに入力するための変換器です。)
ワイヤレスマイク :Rode Wireless Go (5時間講義ぶっ続けでも電池もった!)
Wifi : 有線のほうがいいんでしょうが、部屋のルーター から出しているWiFi で十分でした。上りが30mbpsくらい。
ソフト :OBS。OBS Studioで高画質・高音質な配信をする方法 - 新・VIPで初心者がゲーム実況するには などを参考に設定しました。画質や音質の設定はちょっと気にする必要がありますが、OBS自体は直観的に使いやすいです。
14日のセッティング風景
セッティングはこれだけで、拍子抜けするほどシンプルです。設置状況はさまざまだと思うので、気をつけるべきは、電源・カメラ→PCの入力・LAN(有線なら)それぞれのケーブルの長さ です。
これらに加えて、YouTube のチャット欄+Zoomミーティングの表示用にもう1台PCを立ち上げておきました。
感想:技術面
今回は、今後のユニットの活動に活かすための試行ということで、かなりちゃんとしたユニットの機材を借りられたのでラッキーではありました。どれだけスペックを下げられるかはわかりません。それに、いまの機材であとどれだけクオリティを上げられるかも。
セッティングが固まれば、準備はかんたんです。15分くらいあれば大丈夫 でしょうか。ただし、今回ははじめてだったので、何回もテスト配信をするなど準備に数日かかりました(きらいではないので楽しみましたが)。
おかげさまで、配信にかんする技術的なトラブルはなく、合計20時間ほど安定した配信 ができました。
Zoomは基本的に開店休業状態 でした。また講師側としてはYouTube とZoomを同時にハンドリングするのはなかなか難しいと感じました。1コマ終わったあとなどにYouTube は一時ストップしてZoomに移りまとめて質疑応答用の時間をとる、といった運用がよいかと思います。
感想:講師として
聞き手のリアクションが見えないというのは不安でしたが、やってみると、正直あまり違和感を覚えず 喋りまくりました。これは、わたしがもともと聞き手とあまりインタラク ションをしないタイプの人間だからかもしれません。
教室講義を想定して作った内容をまったく改変せずに配信にぶつけて、しかも1日5時間というのはちょっと常軌を逸しているかもしれませんが、ま、好きな人はこのくらい大丈夫なのではないでしょうか 。アーカイブ もあるしね。
結果・反響
配信中のリアルタイム視聴者数は、14日:70〜80人、15日:40〜50人、21日:30〜40人、22日:25人程度、でした。22日はさすがにツワモノだけが残っていたようで、視聴者数はずっと安定していました(^^)
ぜんぜん多くはないのですが、もともとかなり論理学のかなりマニアックな話題を扱う講義で、例年の受講者数はせいぜい20人程度ということ考えると、こんなものではないでしょうか。アーカイブ の視聴者数も考えると、わたしとしては十分です。
他方でツイッター では、わたしはフォロワー数1000人程度の弱小アカウントですが、こういう時勢ということもあり、告知ツイートに多くのRTやいいねをいただきました(100いいね越えることなんて普段ないんですが)。正直、この講義の内容をしっかり見て楽しめる人は少数だと思いますが、多くの人に向けて「やってるぞ感」は出せた のではないかと思います。
新型肺炎 はさっさと収まってほしいですが、今後もこういう試みは続けていこうと思います。ご意見ありましたらお寄せください。