オンライン講義YouTube配信実録(11)―おまけ:機材・設定編
ありがたいことに、オンライン講義配信の技術的なことについて、学内で問い合わせをいただく機会が多くなってきました。そこで、機材や設定について少し細かくまとめておくことにします。すでに
あたりにまとめてはいますが、改めてということで。いろいろ問題解決、改善など経た上での最終版です。まだベストとは言えませんが。
どういうタイプの講義を配信しているのかについてはこちらから見てください。シンポジウムとか違うタイプのイベントの配信はここからカスタマイズが必要になります (これから2つほどそういうイベントが控えています…)。
ハードウェア
- カメラ:SONY A6400 + SEL1670Z
- マイク:RODE Wireless Go + audiotechnica AT9904
- 配信用パソコン:Apple MacBook Pro 16inch
- スライド用パソコン:講師の私物
- スイッチャー:Black Magic Design Atem Mini Pro
- 照明:Neewer LEDライト480 LED
- その他:iPad, iPhone, カメラ・照明用三脚、各種ケーブル
画像のように配線します。講師の先生は自分でスライドを操作します。スライドの映像とカメラ(マイク音声含む)映像の2回線をAtem Mini Proに入力し、そこからMBPに入力します。Atem Mini Proは回線やPicture in Pictureの切り替えに使用します。
カメラは最初Lumix G8を使っていましたが、どうもきれいな映像にできなかったので、私物のA6400に変えました。気づいた人いるでしょうか。Atem Mini Proは4K入力は受け付けますが、出力は1080pなので基本的にすべて1080で動かしました。4K配信やってみたい!
ですが、じっさい多くのYouTuberが強調するように、だいじなのは映像より音声です。講義やセミナーであれば絶対にピンマイクをおすすめします。Wireless Go+AT9904は安心の組み合わせでした。
PCについては、配信ならほんとうはMacよりもWindows機のほうがやりやすく、しかもコスパがいいはずです。ただし絶対的な性能は必要なので、ゲーミングPCなど「やりすぎ」くらいのスペックのPCを用意するのをおすすめします。
それでもぜんぶで50万ほどあれば必要な機材は揃います。大学などある程度大きな組織であればどーんと揃えちゃえばいいんじゃないでしょうか。
オペ
講師の先生の研究室にお邪魔して設営して配信します。前もって下見に行って電源やLANの接続、明るさなどを確認しておきました。
毎回だいたい45分前から準備開始です。何もなければ時間的には余裕、何かトラブルがあってもリカバリー可能な時間です。
開始前
- 機材設営(20分程度)後、ライブ配信テスト
- 30分前:ツイッターで「このあとすぐ!」的ツイート
- 5分前:カメラ録画開始 (念のため録画もしていました)
- 3分前:Zoomミーティング開始 (YouTubeでの配信と同時に、少人数の学生さん相手にZoomも開いていました)
- 2分前:YouTubeライブ配信開始 (流すのは画像スライドショー)
- 1分前:iPhoneからTwitterライブ開始 (YouTubeへの誘導の役割)
- 定刻:YouTubeをカメラ映像に切り替え、講義開始
講義中
じっさいに配信された動画はこちらからご覧ください。
- 先生はスライドを操作しながら講義に集中
- スイッチャーでカメラ画像・スライド・Picture in Pictureを切り替える
- YouTubeチャット欄を中心に、ツイッター、Zoom、メールをチェック (家で見てるスタッフからメールでトラブル報告が来たりする)
- チャット欄から質問を抜き出し、メモアプリにコピペする
- 参考リンクをはったり、適当なコメントをしたり、チャット欄でちょっと遊ぶ
- 質疑応答の時間になったらiPadを先生に渡し、メモアプリで質問を見て答えてもらう
けっこう忙しいです。ですが、これくらいなら分業するほどのものでもないかなと思います。分業したほうが意思疎通がめんどくさそうです。
終了後
- 講義が終了したら、画像スライドショーに切り替えて配信は継続
- Twitterライブ、カメラ録画は終了
- YouTubeチャット欄に「ありがとうございました、次回もよろしく」コメントをして、YouTube配信終了
- Zoomの学生さんたちと先生の質疑応答→Zoomも終了
- 撤収
機材運搬・設営・撤収は多くの回で学生さんアルバイト1人に手伝ってもらいました。配信中の作業はワンオペです。アルバイト無しで1人で1日2回設営・配信・撤収をやると心身にかなりのダメージがあります笑
ソフトウェア:OBS
基本は、Atem Mini Proからの映像音声を受け取って、OBSでYouTubeに配信します。配信用の主なパラメータ設定は以下のとおりです。
- 映像ビットレート:6000kbps
- エンコーダ:ソフトウェアエンコーダ (x264)
- 音声ビットレート:160
- エンコーダプリセット:medium
- 音声サンプリングレート:48kHz
- 基本(キャンバス)解像度:1920x1080
- 出力(スケーリング)解像度:1920x1080
最初はもっと低いビットレート(たしか2000)でやっていたのですが、ネットやCPUの速度の様子を見ていると大丈夫そうだったので6000に上げました。少し映像はよくなった気がします。ネットは基本的に有線で約1Gbps出てたので余裕でしたし、CPU使用率は10%程度くらいに収まってました。もうちょっと攻められたかも。
OBSではその他に次のような機能を使いました。
- 授業開始前と開始後に流すスライドショー (ソース→画像スライドショー)
- PC内に保存している動画の再生 (ソース→メディアソース)
- Slido (後述)のウィンドウキャプチャ (ソース→ウィンドウキャプチャ)
その他のソフトウェア
Zoom
Zoomに流す映像音声はNDI Virtual Input というプラグインを使って、OBSからのアウトプット(YouTubeへ配信するものと同じもの)を流していました。Zoomは電力を食うし、映像音声もあまりきれいでないので好きではありません。ただものすごいスピードで進化しているので目が離せません。
Slido
アンケート投票ウェブアプリです。リアルタイムで投票結果が表示されるので、参加体験マシマシです。カメラ・スライド映像との切り替えに気を遣いますが、それに見合うリターンはあります。詳しくは以下のエントリをどうぞ。
メモ
macOS標準のメモアプリです。YouTubeライブのチャット欄から質問をコピペします(MBP上)。すると、iCloudを通じてiPadのメモアプリにそれが反映されます。質疑応答の時間中にどんどん来る質問もこれでリアルタイムに先生に伝達できました。便利。
前エントリ
で述べたように、今回ここまでできたのは、私がかなり都合のよいポジションにいたからだと思うので、これからの課題はどうやって制度化するかですね。講義中の配信操作をする人間が純粋な技術スタッフでもなく純粋に内容のみにかかわるわけでもないので、誰がそこをやるのか難しいところかなと思います。